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島根大学:統合腎疾患制御研究・開発センター腎-多臓器ネットワーク制御部門

2024.12.222025.01.16
牧石 徹也教授

腎−多臓器ネットワーク制御部門では、「健康格差」に関わる要因に注目し、地域差や社会経済要因が腎機能や腎臓病患者さんのQOLにに与える影響の解明に取り組んでいます。

 当部門では、腎臓とそれを取り巻く多臓器間とのネットワーク機構を解明することにより、腎寿命の延長、さらには健康寿命を伸ばすことを目的とした研究を行っている。腎は体内の恒常性を維持する臓器であり、『心腎連関』や『肝腎症候群』、『肺腎症候群』、『腎性貧血』、『CKD-MBD』などが知られているように、諸臓器の中でも特に他臓器との連携が密な臓器である。おそらく腎は生命の進化の過程で体内ホメオスターシスを維持する中心臓器としての進化を遂げる中で、多臓器との密なネットワークを制御するメカニズムを発達させたと考えられる。代表的な制御ツールとしては、交感神経・副交感神経による自律神経システム、そして内分泌システムが挙げられるが、果たしてそれら既知のシステムのみで、多臓器との密な連携は可能であろうか。IKRA各部門と連携しつつ、これまでの実験技術では捉えきれていなかった可能性のある腎を中心とした多臓器ネットワーク制御システムの解明を進めていく。

また、腎臓をさらに俯瞰的に、その腎臓の主である個人を取り巻く社会環境との関わりの中で捉える試みを行っている。貧困に代表される社会格差は健康格差に結びつきやすく、公平な社会の実現を阻んでいる。図は、米国において貧困がいかにして慢性腎臓病の進展(腎老化)に関わっているかを示したものである。本邦では国民皆保険制度が整備されているものの、コロナ禍を経て近年社会格差は広がっており本邦においても図で示される関係性が成り立つ可能性は十分にあるが、慢性腎臓病進展に関わる社会的要因についての研究は本邦ではまだほとんどなされていない。

 経済的貧窮の他にも、 “ヘルスリテラシーが低いこと”や“不適切な生活習慣は”はしばしば個人の責任と捉えられがちである。慢性腎臓病進展に関わる社会的要因をエビデンスとして示すことによって社会格差が健康格差に結びつかない持続可能な社会の実現を目指している。